くすぐり鬼ごっこ

 

ジャンル:栞との思い出 / 公開日:2018/02/21 /

       

小学校のお昼休みの時間、教室では友達同士でトランプをしている人、お喋りに華を咲かせる人の喧騒で賑わっていた。ふと、教室の窓から校庭の方を見ると、数人でサッカーをしている傍ら、1人の男の子と5人の女の子たちが集まっているのが見えた。

「ね?…ちょっと、待って…お願いだから一旦落ち着こ…?」
後づさりしながら声をかけるが、完全に女の子たちに包囲されており、後ろは大きな木がある。逃げ場はなさそう…。
「うふふ…もう逃げられないよ?覚悟はいいかなぁ?」
中心にいる栞が、笑みを浮かべ、両手をくすぐったそうに動かしながら近づいてくる。なんでこうなったんだろ…

…鬼ごっこが始まるきっかけは、栞に誘われたからだった。教室でぼんやりと本を眺めてる時に、幼馴染みの栞が後ろから話しかけてきた。
「…わっ!!」「ひぃ!!!」ビクッッ
耳もとからいきなり大きな声が聞こえて、肩をすぼめた。
「びっくりした…いきなり脅かさないでよ」
「あはは!!ごめんごめん、ちょっと元気づけようとおもって!」
「別に落ち込んでないけど…で、何の用?」
「んー…いいお天気だから外で遊びたいなぁって思ってさ。今から友達4人と外で鬼ごっこするんだけど、一緒にやらない?あ、君が逃げる役で私たちが鬼ね?」
「え~なんで5対1なの圧倒的不利じゃん」
「男の子だからハンデね!ね?お願い!!
君が逃げ切ったら何でも言うこと聞いてあげるから約束する」
「言ったな?ちゃんと約束守ってよ?」
「もちろん!でももし捕まったら…全員でこちょこちょの刑にしてあげるね!」
げ…それはつらい…でも逃げ切ればいいんだよな、いける…!!

いや、さすがに女の子には捕まらないと思ってたんだよ、だけどさすがに5人から逃げ続けるのは無謀だった…。普段からあまり運動しないで、姉の影響で本ばっか読んでるせいか、すぐに息が切れてしまった。
「はぁ…はぁ…しんどい」
明らかに手加減されてるのが分かる。しかも逃げ道を誘導されてる気がする…。逃げ惑っているうちに、目の前に大きな木が見えた。しまった…行き止まりだ…。ふと後ろを振り返ると、自分を囲むようにゆっくりと近づいてくるのが見えた。

「もう逃げられないねぇ…?どう?覚悟はできた?」
死んじゃう…走って疲れたところをくすぐられたら…。よし、一か八かで女の子の間を通り抜けて逃げよう、それしかない…!!
「うぉぉぉ!!!!!」
勢いよく隙間を通り抜けようとしたが、あっさりと捕まってしまい、1人に羽交い締めされた状態で地面に座らされてしまった。
1人に膝の上に乗られて、自分の太ももの上にさらに栞が乗っかってきた。完全に固定されて、逃げられなくされてしまった…
「つ~かま~えた!!!罰として、死ぬほどくすぐってあげるね…?」
目の前で栞が嬉しそうに言った。あとの2人は、自分の両脇に座っている。
「いや…!!もう疲れたから勘弁して…?」
そんな願いなど聞いてくれるはずもなく、ゆっくりと手を近づけてくる。

「いくよ…?3、2、1…こちょこちょこちょこちょこちょこちょ~!!!!!!」
「ひぃぃ!!あ、あはははははは!!!!やめ、やめてぇぇ!!!!」
暴れて逃げようとするが、両腕も両足も動かすことはできなかった。膝の上に乗った女の子に太ももやふくらはぎをくすぐられ、右隣にいる女の子にお腹や両脇を揉むようにくすぐられており、左隣の女の子に脇の下の窪みをこちょこちょされている。
「君が弱いのはここだよね~!!こちょこちょこちょ~!!!」
「ああああ!!!やめてほんとにだめだから!!あはははははは!!だめぇ!!!」
栞に弱点の首のしたをこちょこちょされ、首を振って逃れようとするが、後ろから羽交い締めしている女の子に頭を固定されてしまった…。
「ねぇねぇ、くすぐったい?どこが一番くすぐったいのか言ってみ?」
「くびはやめてぇぇぇ!!あはははは!!くすぐっ、くすぐったいからぁ!!!!」
そう答えると、脇の下や、両脇、太ももへのくすぐりがさらに強まった。
「みんな~、首以外はくすぐったくないみたいだからもっと激しくくすぐってあげて~」
「やめ!!やめてぇ!!ぜんぶくすぐったい!!くすぐったいからぁぁ!!」
「全部弱いの?じゃあもっともっとくすぐってあげるね!!」

…昼休みが終わる間際まで、くすぐられ続け、終わった頃にはしばらく動けないぐらい体が疲れていた。他の女の子たちや、サッカーをしていた人達は教室に帰ってしまい、広い校庭には自分と栞しかいなかった。
「はぁ…はぁ…まだ身体がむずむずする…」
「お疲れ~!!大丈夫?立てる?動ける?」
栞が少し心配そうに声をかけてくる。
「誰かさんのせいで明日絶対筋肉痛だわ」
「あはは!でもさ、少しはいい運動になったでしょ?」
仰向けで空を見上げる自分に、栞が笑いながら手を差しのべてきた。
「…ありがと。」
小声で呟くようにそう言ったけど、
「どういたしまして」と小声で返事が返ってきた。

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